労務問題雑記ブログ

日々発生する労使紛争に対する法律上の対応に関する記事をお届け。また、働き方改革関連法に関する情報発信も随時行います。ときどき書評も。

個別労働紛争解決制度

 個人的な感覚ですが、ここ最近は労働者の方からいじめ・嫌がらせに関する相談を多く受けるようになった気がします。

 相談の中には、「それって単なる業務上の注意なんじゃ・・・」としか思えないような当たり障りのないような内容の相談もあれば、職場の上司によるパワハラが原因で精神疾患を患ってしまい仕事ができなくなったというものもあります。

 いじめ・嫌がらせの程度がどうあれ、私の場合はひとまず個別労働紛争解決制度について相談者に説明することにしています。この制度は、解雇や雇止め、いじめ・嫌がらせやセクハラ等、事業主と労働者との間に労働紛争が生じた場合に利用できます。当該制度を利用すれば、都道府県労働局長による助言指導や労働問題の専門家で構成される紛争調整委員会による斡旋を受けることができます。

 この制度を利用するための窓口は全国の労働基準監督署に置かれており、総合労働相談員と呼ばれる方が斡旋等の申請内容を局へ報告する役割を担っています。管轄の労働基準監督署に勤務している総合労働相談員さんに対して、個別労働紛争解決制度を利用したい旨伝えれば、相談員さんが具体的な手続きについて教えてくれるでしょう。

 この制度を利用するための手数料は無料ですので、裁判を起こすだけの費用を負担できない労働者さんにとってありがたい制度と言えます。しかも、1事案ごとの処理期間も裁判に比べると比較的短くて済むようです。

 とはいえ、都道府県労働局長による助言指導はあくまで行政指導にすぎないため、事業主がそれに従うことを強制されるわけではありません。また、紛争調整委員会による斡旋にしても、あっせん開始の通知を受けた事業主が、あっせんの手続きに参加する意思がない旨を表明したときは、あっせんは実施せず、打ち切りになります。

 個別労働紛争解決制度は、あくまで事業主と労働者との民事的な合意を形成して問題解決を図る制度であるため、裁判みたいな強制力まで持っていないのが弱点と言えます。しかしながら、当該制度を利用することにより解決に至った事案も少なからずあるので、利用してみるのも十分ありかと思います。

 

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