労務問題雑記ブログ

日々発生する労使紛争に対する法律上の対応に関する記事をお届け。また、働き方改革関連法に関する情報発信も随時行います。ときどき書評も。

年次有給休暇5日間取得義務対象労働者の範囲

 労働基準法の改正により、使用者は年次有給休暇の付与日数が10日以上の労働者を対象として、有給の付与日から1年以内に最低5日間の有給を取得させる義務が課せられることとなりました。

 あくまで付与される有給の日数が10日以上の労働者が対象です。そのため、例えば週4日勤務のパート労働者の場合は入社後6カ月で7日、その1年後に8日の有給しか付与されないので、このようなパート労働者は改正労基法に基づく有給の取得義務化の対象外となります。

 しかしながら、法律上は7日とか8日分の有給を与えればよいパート労働者に対しても、就業規則において10日の有給を与えている会社があります。このような場合も改正労基法における有給取得義務化の対象労働者に含まれるのでしょうか。

 この点について、現在のところ行政通達等で明確にされているわけではありません。しかし、労基法第39条第7項の文言を素直に読めば、法律の基準を超えて多く有給を付与された労働者は有給取得義務の対象外であると考えざるをえないと思います。

 

労基法第39条第7項

 使用者は、第一項から第三項までの規定による有給休暇(これらの規定により使用者が与えなければならない有給休暇の日数が十労働日以上である労働者に係るものに限る。以下この項及び次項において同じ。)の日数のうち五日については、基準日(継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日をいう。以下この項において同じ。)から一年以内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。ただし、第一項から第三項までの規定による有給休暇を当該有給休暇に係る基準日より前の日から与えることとしたときは、厚生労働省令で定めるところにより、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。

 

 下線赤文字部分を読んでいただければわかるとおり、有給取得義務化の対象となる労働者の範囲は「付与される有給休暇の日数が10労働日以上である労働者」一般ではなく、あくまで「労基法第39条第1項から第3項までの規定により付与される有給の日数が10日以上である労働者」なのです。そして、週所定労働時間が30時間未満かつ週所定労働日数が4日以下の労働者で労基法第39条第3項の規定に基づき比例付与された有給日数が10日に満たない者は、有給取得義務化の対象外であると考えられます。